1周目クリアの感想です
いくつかの項目に分けて書きます。
●システムについてこれを一番に持ってくるのも何ですが、書きやすいので(笑)。
今回のシステムは非っ常~に良かった!!サクサク戦闘に、鬱陶しくないアイテム処理。ないに等しいロード時間。なんというストレスフリー。
ロードも戦闘も慣れれば何てことないんですが、慣れる必要すらないのは快適でした。
テレポートがありませんが、そもそもフィールド移動をすっ飛ばして街から街へ移動できるからあまり必要ないんですよね。交易の難易度が多少上がったくらいかな?
それでも今回の交易は出品されている品数が多くて困ることがないので、「移動している間に季節が…!」くらいのハラハラがあって丁度良いとも言えます。
エンカウントは多かったのですが、それが幻水(笑)。歴代シリーズに比べて多いということはないかと。
●音楽について文句ありません。幻水らしさを出しつつ、街や民族ごとに特徴が出てて良かった!
特別な戦闘に使用される戦闘曲はツボに入りまくりでした。サントラ悩むううう
●喋る主人公についていや、別に、初めてではありませんが…。3は全員喋ってたし、ナッシュもキリルもよく喋った。
でも「プレイヤーが名前をつけるキャラ」が話しまくるのは初めてだったので、一応書いておきます。
彼に選択肢以外の台詞がなかったら、感情移入する以前に共感できなかったと思う。これに尽きるんじゃないかなー…。
たとえばあまり話さない主人公ならマリカやジェイルが代弁することになったんでしょうが、それだと弱いと思うのです。いろんな組織のトップが集まっているような集団で、彼らをまとめて率いてみんなの迷いを吹き飛ばし道を作っていく存在ですもの。目力だけではフォローできないと思う(笑)。
それに、熱血漢で無鉄砲で感情先行のようなところもあるのに、頭が良いんですよこの主人公。
大事な場面でこちらがハッとするような台詞を言ってくれる。それがすごく良かった!
あ。でも、一つだけ愚痴を言ってもよかですか。
みんなから「リーダー」と呼ばれることを前提に「リードァ(発音はリーダ)」と名づけたのに、ただの一度も呼んでもらえませんでした。
たとえばテキストに「リードァ」と名前が表示されている時の、それを読むボイス……
「あんた」「お前」「貴殿」「あなた」「団長」
4のように名前部分を完全にすっ飛ばすことがないのは嬉しかったのですが。
…………。
団長かよ……orz●ストーリーについてCEROがAなだけあって、首斬り・家族を殺してしまうという展開はありません。虐殺(に近いもの)はありましたが、残酷な表現ではありませんでした。身近な人の死はありましたが、イマイチ気分が乗り切らなかったのが本音のところ。
主人公に呪いはかかってないし、悲劇的要素は薄かった。これまでの「切なさ」は決定的に欠けてます。
また、仲間になるイベントは大体において非常にあっさりしていて、確執や葛藤は少なめです。
ただし、これには理由があると思うのです。
今回、世界の危機の真相は宿星しか知ることが出来ません。星を宿していないけど協力している人たちの中には、不思議に思っている人もいるんじゃないかなあ……。なんでそこまで一生懸命戦うの?って。
今回の仲間は王や族長や村長など組織のトップが集まっていたけど、他の組織を動かすには必要なことでした。組織のトップが参加していない国の出身者はあくまで個人としてしか参加できず、国を動かすことは最後までできませんでした。
主人公たちは、ある意味孤独なテロリスト集団です。理解してくれるのは、異世界で同じ戦いをしている別の宿星たちだけ。だからこそ、団結力が必要だった。仲間内で葛藤だの衝突だのしている余裕はなかったと思われます。
そうは言っても、もっと葛藤するイベントがあっても良かったかな…とは思う。
けれど不満はあまりない。なぜなら熱い展開があったから。
大勢の人の想い、意志、希望、信頼はしっかり描かれていたと思います。私は感激のあまり涙が出た(笑)。キャラクターも作りこまれていましたし、サブイベント(という名のクエスト)も充実している。幻水の魅力である「人の物語」がきっちり描かれていました。
なにより、初代幻水OPの「教えてください 運命とは定められたものなのでは…」という問いかけに、すごく明確な答えを出してくれていると思います。
テーマは変わってないよ。むしろ原点に帰ってるよ。本当に、今回のスタッフはがんばった!
●過去作とのからみについて真の紋章は出てこないし、過去作とはアイテム名くらいの関連しかありません。
でも「幻想水滸伝」ではあったなーと思います。
何がって、今回は「宿星」に焦点を当ててきました。
そもそも「水滸伝」の宿星って、元々は封印を解かれた108の魔物なのですよ。
水滸伝は、乱世の少し前から始まる物語。自分の位を誇りたがる困った役人(※大物です)が、由緒正しい寺へ行った時に封印されている建物を見つけ、「この中には何がある?」「だれだれ上人が封じた魔物がいます」「おもしろい、開けてみせろ」「いやこれは…」「オレ様の言うことが聞けねえのかゴラァ」「いやでも…」「ゴラァ」という押し問答の末、無理やり封印を解いてしまい、そこから飛び散った108の魔物が人になり、乱世を起こしていくお話です。
といっても、宿星が悪の存在かと言ったらそうでもない。約束の石板に当たるものは女仙がわざわざ天魁星・宋江に与えてますし、彼らは基本的に横暴な役人を叩きのめし弱き者のために法を破るだけ(建前は)。役人が民を苦しめている世の中にあっては、世に乱世をもたらす魔物の化身は”庶民の味方”です。
そんな、女仙に認められた星の名を持つ存在。それが宿星なんですよね。
だからこそ108星にはあらかじめ位階が決められていて、それぞれに合った役割というものも担っている。
(余談ですが、北方水滸伝は妖を排除し人の物語として再構築しているので宿星が出てこないのかと)
まあ、何が言いたいかというと、原典の「水滸伝」で宿星が宿星なのは理由があるということです。
幻水でこの点が強調されたのは初めてじゃないかな。
たとえばサンチョが宿星入りしてグリフィスに従っている人が宿星じゃなかったり、
トウタは宿星入りしてミンミン(レストランで働いている名前付きキャラ)が宿星じゃなかったり、
一緒に戦っている人から見たら「なんでオレは違うのにあいつが…」みたいのって、あると思うんですよ。
この点が、ティアクライスは気持ち良いくらいにハッキリしてる。
協力してくれる仲間だけど宿星ではない人がいるとしたら、その理由は明らかです。
そして、彼らは一貫して”ひとつの定められた未来”に対抗している。いわば混沌をもたらす魔的な存在です。
宿星であることと、彼らの目的。この2点が元ネタである水滸伝に近いような気がするのです。
で、別世界のお話だから「幻想」が頭について、「幻想水滸伝」。
幻水シリーズは2以降「幻水1の世界でおきた歴史上の戦い」を描いてきたけど、ティアクライスはこれまでの幻水世界から一歩離れ、改めて出来た「幻想水滸伝」なのですよねー。
その上で、ストーリーの項でも書いたとおり、幻水無印からの問いかけ「教えてください 運命とは定められたものなのでは…」に答えを出しているのです。
スタッフがんばった!(2度目)
そうはいっても、幻水のナンバーを冠した作品は、ある世界の地図や歴史が広がりを見せていくことが魅力の一つでしょう。その中で思いがけない人の繋がりを発見して、どんどん世界に深みが増していく。
この世界の行く末を見守りたいという気持ちがファンの中にはあるかと(ティアクライスは一つの答えを出してくれたと思いますが)。
そこには真の紋章の存在もやはり欠かせないんですよね。
というわけで、ティアクライスは「幻想水滸伝」として評価できるし、すごく楽しめたのですが、それはそれとして、やはり幻水世界での「幻想水滸伝」の続きも見てみたいのです(笑)。
●不満だったところこちらも、きちんと書いておきましょう。
・「すりぬけの札」がない
今回のダンジョンは、かなり本格的でした。それだけ攻略のしがいがあり楽しかったのですが、ヤバイと思った時に抜け出せないのがどうにもこうにも……マップを書かずに進んでいくと簡単に迷子になります。そこでアイテムやMPが切れたら一体どうすればいいのか。本当に、すりぬけの札は欲しかった!
・「2周目への引継ぎ」がない
DSということを考えればそこまで出来ないのも無理はないのかもしれませんが、やはり欲しかった。
特に2周目ではムービースキップが欲しいので、これが出来ないのも辛い。※↑ムービーをつついてたら出来ました。資金集めなどの単純作業に割く時間は2周目以降では少なくしたいのが本音なので、1周目と同じ単純作業をしなくてはならないのかと思うと、少々気が萎えます。
幻水3までなかったものを求めるのもどうかと思いますが……。4、ラプソ、5における引継ぎの楽さに慣れてしまっていたかな。
・ジョウイorスノウorサイアリーズのポジションが弱い
あの人は、もっと面白くもなれたし、もっと悲劇的にもなれたはず。
私にとって、あの人のウザさは途中で笑えない域に達してしまいました。
ある意味スノウ以上に普通の人らしい反応だったとも言えるので、捉え方は人それぞれでしょうが…。
うう。あの一言、あの一言さえなければ…!(プレイ日記中で「それは駄目だ」と感想を書いた台詞)
・絶叫が、絶叫すぎた
主人公のことです。こちらがショックを受ける前に叫ばれると思わず距離をとってしまうよ(笑)。
その他は、声も台詞も大好きです。主人公で、唯一不満を挙げるとすればコレという感じで。
●総合的には非常に面白かった!やりごたえのある、満足できるRPGだと思います。
幻水世界の歴史は出てこないけど、幻水の「大勢の人が集まって、それぞれに人生があり、様々な想いが交錯する空気」が好きという人にはお勧めできるかと。
最後に余談。
ティアクライスって、幻水世界で言うといつくらいの時間軸になると思います?
プレイ中は漠然とIV~IIIの間のいずれかで考えていましたが、プレイ後に改めて考えてみました。
ずっと未来の「灰色の世界」が訪れる時だったら、幻水世界でも同様の戦いが起きていたかもしれません。
また、ヒクサクによって門の紋章の村が滅びた時期と一致していても面白いと思います。
こう考えると、宿星の定義などもティアクライス世界と幻水世界って整合性が取れる気がするのですよね……。いろいろ考えると楽しいです。
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